情熱の原点

つまらない毎日が、

ただ繰り返されていく日常に

嫌気が差していた。


安らげない週末。

休んでいるはずなのに、

頭のなかはいつも、

休みが終わることばかり。


憂鬱な月曜の朝が

どうせやってくる

もう休みが終わる…

早くも次の休みが待ち遠しい

今週はこの仕事を片付けないとな

でもやる気がでない…


みんなを納得させられる成果など、

出せるはずもない

そんな力は自分にないと

自分を諦めていたつもりになっていた。


ぶら下がり社員でいいや…

楽になりたい…

紐を切られたタコのように

流されるがまま

過ぎていく日々。


給料日、

増えていく口座残高を眺めるのが

唯一、少し嬉しくなる瞬間だった。


エンジニアとしての階段を上がることなど、

果てしないことのように思えた。

とてもじゃないけど、

着いていけない…


成長が遅い自分を、

みきりをつけられるんじゃないか、

「できないやつ」

そんなふうに、

呆れられたと感じるその瞬間がやってくることをただ、

恐れていた。

 

 

熱くなりたかった。

部活と共に過ごした青春。

 

ひたすら熱中していた。


こんなことをして、

なんになるのだろうか?


そんな疑問すら持たないまま、

ただ気持ちの赴くままに、

ひたすら練習に打ち込んだ。


もっと強くなりたい

上手くなりたい

試合で勝ちたい

自分らしいパフォーマンスを発揮したい。

 

うまい自分に、

強い自分に、

酔いしれたい、

認められたい

成長して見返したい

相手を打ち負かしたい

すごいと思われたい、

そんな気持ちもあったけれど。


「バドミントンプレーヤー」

というアイデンティティーだけが、

自分にとって誇りだった。

プライドを持っていた。


それだけが生き甲斐で、

それだけあれば十分だった。


認めてくれない人への

苛立ちと、

失望が、

常に隣り合わせではあったけれど。


熱かった。

楽しかった。


こんな日々が、

ずっと続けばいいと思っていた。


自分の限界を知りたい。

どこまで行けるのか、

自分も知らない自分に出会いたい。


そう思って、

高校時代、県大会にすら出られなかった自分が、

全国の強豪が集まるチームで練習したいと、

関東1部リーグ所属の私大に入学することを選んだ。


僕から見たら、

スター選手ばかりだった。

部員は軒並み全国大会の上位入賞者。


そんな中に飛び込むのは、

恐ろしいことだった。

相手にされないんじゃないか。

無視されるんじゃないか。

いじめられるかもしれない。


強い人は、みんな恐そうに見えた。

弱い人など、口も聞いてもらえないかもしれない。


人生で一番ありったけの勇気を振り絞った。

今思うと、

あれが人生で初めて、

自らの意思でバンジーを飛んだ時だった。


いじめられようが、

無視されようが、

自分が強くなるための、

最高の環境を選ぼう、


そう覚悟した。


コネなど全くない。


ホームページにあった問合せフォームから、

震える手で文字を打ち、

部員の方にコンタクトを取って、

入部させてほしい、

大学入学前の春休みから

練習に参加させてほしいと

頼み込んだ。



練習はキツかった。

嫌になることも何度もあった。


それでも、

必死に食らいついた。


自分で決めたことだから、

投げ出すことはなかった。


テスト期間が嫌だった。

練習がなくなるから。

体育館が空いてれば、

一人でも練習し続けた。


バカにされることは多かったけど、

そうやってアホみたいに練習しているうちに、

みんな真剣に教えてくれるようになった。


できなかったことが

できるようになっている、

それを感じる瞬間が本当に嬉しかった。


それをこつこつ積み重ねるうちに、

プレーの質は

まるで別人のように変わっていた。


バドミントンが、今まで以上に楽しくなった。


結果らしい結果は

ついに残せなかったけど、

留年して部活をやめるまでの3年間、

やりきった。


練習を休んだ日は

3年間で、片手で数えるくらいしかなかったと思う。


悔いはなかった。

 

 

「情熱の原点」

という言葉を見たとき、

思い出したのが、

このエピソードだった。


誰もが、

胸のなかに持っているはずだ。

何かにまっすぐにエネルギーを注いだ瞬間が。


そのエネルギーを

再び解放させてやるそのカギは、

いつだって

ほんのちょっとの勇気だ。


そして、

輝きを失ってしまったと感じているなら、

今の与えられたその持ち場で、

まずはやりきってみることだ。


小さな成功でいい。

その喜びを感じられるまで。


アホみたいに、

コツコツ積み重ねていくことが、

いつか自分が想像もしていなかった場所に、

自分を連れていく唯一の手段なのだから。

Shohei Shimizu Photography

「命の輝きを撮る写真家」清水 翔平

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